症例の紹介

喘息

症例5:秋口に毎年発症する子供の喘息症状

DATA

患者: 男の子 9歳 宝塚市
来院: 2017年9月
鍼灸の経験: なし

症状の特徴と経過

子供の風邪が2週間以上薬を飲み続けても治らず、週末の運動会に参加できるか心配になり、ママ友さんに相談したところ当院をご紹介頂き来院。
同時に毎年秋口に必ず苦しめられ、2度の入院を経験している喘息症状も事前に何とかしてあげたいとのご要望。

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治療の内容と経過

身体を弱らせている原因が背中にあり、背中の緊張を解くことで症状は自然に収束していくと考えた。
初回は鍼に対して強い緊張感があるお子さんを考慮して、手足から施術にはいった。
その後うつ伏せで首・肩・お尻・特に背中の硬い部分を入念に小児はりでなでているうちに、熟睡してくれたこと・お腹の変化を判断材料に背中の緊張も緩んだことを確認して施術を終えた。

【2~3診目】週2回
痰と鼻水は残るが咳症状は感覚としてマシ。
お腹は胃の力が出ており、大腸の緊張が残っていたので足と背中を中心に刺激は弱めになでる。

3診目、昨日の運動会に無事参加でき楽しく競技ができた。
黄色の痰がなくなり、咳・鼻水の頻度も減っている。
背中・肩甲骨の緊張も緩んでいるので、通院頻度を1週間に空ける。

【4〜7診目】
咳・鼻水共に消失。
秋口の喘息予防のため、肩甲骨内側に緊張がかからないように調整。
2週間に間隔を空け経過観察をおこない、喘息症状が出ないことを確認してご卒業頂く。

同時に治療した症状 鼻水・おねしょ
使用した主なツボ 背部ライン

考察

毎年秋口に喘息が出る理由を、季節の変わり目で寒くなり身体の緊張が強くなるからと考えると、解決策は身体の緊張を緩和してあげるという非常にシンプルな答えが導き出される。
そのなかでも風邪や喘息などは、肩甲骨や横隔膜付近など背中の緊張が鍵となる。
風邪は身体の緊張を緩和させるために必要な経過反応である、と知っておくと病院通いをする回数も激減するはずである。

症例4:行事前や季節の変わり目に体調を崩してしまう

DATA

患者: 男の子 8歳 宝塚市
来院: 2016年11月
鍼灸の経験: なし

症状の特徴と経過

季節の変わり目や行事前などに子供が体調を崩しやすいと感じていたが小学校に入ってからは風邪や発熱以外の症状も出るようになる。2か月前にはヘルペス、先月はクループ症候群(ケンケン咳)といった症状が続き、楽しみにしていた運動会やハロウィンパーティーなどの行事も全て休まざる負えなかった。病院での治療も対症療法になる為、症状が起こらない様未然に防ぐ手はないかと考えた時に鍼灸治療を思いつき、一度自分で治療を受けてから再度息子さんを連れて来院。

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治療の内容と経過

11月も音楽会・みこし祭り・家族旅行と週替わりでイベントがおこなわれるため、一つずつ参加出来る事を目標とした。
行事前や季節の変わり目に体調を崩しやすい、咳・鼻水・目、背中の痒みなど症状が上半身に偏っている事から、上半身への身体の過度な勢いが原因と考えた。

過度な勢いの分散と身体の制御システムを強化する目的で頭・首・顔・背中・胸を中心に刺さずになでる大師流小児鍼をおこない、背中と腰のツボに線香灸(気持ちの良いお灸)をおこなう。

この治療を週1回ペースの計5回おこなった結果、無事全ての行事に楽しく参加する事ができた。子供の状態は日々変わるので、1ヶ月の間に症状が再発する事もあったがその都度対応する事ですみやかに経過する事ができた。引き続き身体が安定するまで定期的に診させて頂いている。

同時に治療した症状 咳・鼻水・頭痛・目、背中の痒み
使用した主なツボ 大椎・身中・肺兪・命門(灸)

考察

症例のような神経過敏症状は優しい周囲に気配りが出来る子に多いと個人的に感じる。この場合決してお子様の生活習慣が悪いのではなく、優しすぎる・賢すぎる・元気すぎるゆえの個性としての反応と考える。身体の過剰な部分・不足した部分に少しの刺激を与えるだけで大きな助けになれる事が鍼灸の強みである。
お子様の保険料は無料で、自費の鍼灸院に子供を連れて行く事は相当な勇気がいる。こちらとしても相応の施術が必要と強く認識している。

症例3:疲労が溜まると咳が止まらない

DATA

患者: 女性 42歳 宝塚市
来院: 2016年9月
鍼灸の経験: あり

症状の特徴と経過

以前より肩・首こりの痛みが限界を超えた際に来院されていた。咳アレルギーを患い、特に疲労が蓄積し身体が弱った際に発症する。この2週間、仕事が多忙を極めている所に、お子さんのこじらせた風邪も重なり不眠不休の生活が続いた事で咳が止まらなくなる。これでは身体が持たないと考え来院。

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治療の内容と経過

不眠不休の生活で身体は冷えて固まり、パソコンを常に使われる仕事のため、肩から上は乾いた熱がこもっていた。乾いた熱を逃がそうにも、背部は冷え固まり行き場を失った熱が目・鼻・口で炎上している状態と考えた。

身体全面は胸を広げる事を目的としたツボを使い、後面は熱を逃がすためのルートを確保する為に、肩こりと背中を緩めるツボを背中に求めた。下半身を温め上半身に潤いを与える目的で足裏とお尻に温灸を用いた。
仰向けの治療後、咳の状態を観察すると緩和している。うつ伏せの抜鍼後は咳が出なくなっていた。
3日後確認のご連絡を差し上げた所、忙しいながらも咳はおさまっている様である。

同時に治療した症状 肩・首こり
使用した主なツボ 尺沢、列缺、照海、愈府、風池、肺兪、膏盲L

考察

当院が考える喘息の原因をほぼ全て兼ね備えた症例。その中でも胸と背中の緊張を取ることが、最短の改善法と考えた。さらに下半身を温める事で納気作用が高まり、上で詰まった気血の滞りを下に引き寄せる事が出来たため、すみやかに咳が改善されかつ一時的では無く持続した効果を出せたと考える。

症例2:薬で治らない風邪症状

DATA

患者: 女性 30代 川西市
来院: 2017年1月
鍼灸の経験: あり

症状の特徴と経過

去年の秋から、風邪と胃腸炎を繰り返し体調が安定しない。必ず喉痛から鼻水に症状が進行し、咳が止まらなくなる。病院に行っても薬で一時的に止めている感覚しかなく、3日前から嚥下痛・咳と副鼻腔炎に寒気・肩こり・後頭部痛も加わった為、体質改善を望んで当院へご相談を頂く。

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治療の内容と経過

長期間体調が安定しない、触診からお身体が冷え切った状態。
その中でも身体の督脈・任脈と呼ばれる中心軸に問題があり、冷えが気道を狭くし肺・胃の動きを制限していると考えた。身体のヒーター作用となる場所の汗腺が開いて冷えていた為、首の両脇と肺を温める計5つのツボに知熱灸を各7壮ずつ据える。同時に仙骨・腰・足底に温灸を加えその後、肩・横隔膜の動きを良くする活法を2種類おこなう。起き上がると嚥下痛・咳・鼻水が全て消失し2人で変化を実感しあう。毎回、喉から鼻風邪に進行する特徴を考慮し、未然に防ぐため手足のツボを用いて仕上げた。

【2診目】5日後しつこい風邪症状は全て緩解し、肩こりが残っていたので前回同様のお灸に加えて肩こり治療をおこなう。風邪をひきやすい・月経周期が長い体質を改善するために現在も定期的に来院中である。

同時に治療した症状 肩こり、
使用した主なツボ 督兪LR、身中、肺兪LR、偏歴R、太淵R、兪府L

考察

風邪は身体の緊張が限界を越えた時、身体を適度に緩めてくれる大切な防衛反応のため治すものではなく経過させるものと考えている。薬を飲むと病原菌や炎症を抑え込む事ができこれで自分の力が勝れば良いが、力がないときは立ち向かえず身体を緩める機会を失うので余計に身体が固くなり結果、こじらせてしまう。
そんな時、鍼灸治療は身体そのものの回復のために胃を養い深い呼吸を取り戻す応援が出来るのでこじらせた風邪にも有効である。

症例1:肋骨骨折後の喘息症状

DATA

患者: 松井一広さん 63歳 伊丹市
来院: 2016年10月
鍼灸の経験 あり

症状の特徴と経過

1週間前、大工仕事の現場で屋根に上って作業をしていた際に足を踏み外して転落。左脇~胸を強打し救急車で病院に運ばれレントゲン検査にて、左第11肋骨骨折で全治1ヶ月の診断を受ける。
固定と痛み止めの処置で、翌日を迎えた所痛みが緩和。仕事を再開した3日後、咳をした際脇から胸にかけて激痛が走る。以降、呼吸をするだけでも痛みがおさまらなくなり夜も眠れなくなる。
翌日以降の緩和を期待するも一向に改善の兆しがみられず、痛み止めの効果もほぼ無くなった為、当院へ相談。
骨折の癒着には診断通り時間を要するが、痛みの緩和・治癒力の促進は可能である事を伝えそのまま来院頂く。

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治療の内容と経過

治療方針は3点。
①気血を調整して、経絡(ツボの流れ)の通りを良くする。
②呼吸がしやすい様に胸を広げる。
③咳やくしゃみが頻発するのは、胸・脇を打撲して骨折した事により身体が熱を持ちやすくなっている事が原因。
熱を冷ませば、不意な突き上がりが軽減されるので呼吸がしやすくなると考えた。

【1診目】過敏になった神経をブロックする目的で痛みが一番強い横ライン上の、左背骨際に対して鍼を1本おこなう。その後、仰向けで①と③を考慮した手足のツボ2ヶ所に鍼を20分間置鍼。その間に鼻で吸って口で吐く深呼吸をゆっくりして頂き、胸をゆっくり広げる。10分後、胸を広げる手のツボ、骨の修復を高める足のツボを追加。施術後、起き上がって頂くと寝返り動作に痛みが無くなりわざと咳やくしゃみをしてもらうと痛みが10→2まで緩和。

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【2診目】6日後、前日に病院で長時間待たされ腰が痛くなり来院。前日までは非常に調子が良く、夜も熟睡でき咳やくしゃみの頻度も減り、痛みも緩和していた。
腰に対しても同じ方針で治療が出来ると考え、再度同様の施術で腰の痛みも消失。

仕事を一切休んでいないので、骨がくっつく前に仕事を継続するのであれば最低2ヶ月は治療に来て頂きたい旨を伝え、定期的な来院を続けてもらう。打撲跡はまだまだ痛々しいが、骨折前と何ら変わる事なく一生懸命仕事に励まれている。

同時に治療した症状 咳・くしゃみの頻発、不眠、腰痛
使用した主なツボ 外関L→内関L(透鍼)、陽陵泉L、太谿LR

考察

骨折に対しては安静・固定が鉄則といわれているが、安静に出来ない・安静にしていても痛い状況というのは多々ある。そんな時、患者さんのQOLを自然に高め、日常生活をサポート出来る術が鍼灸治療である。
普段当院では「整動鍼」と呼ばれる動きを整える事に着眼した治療を主としているが、今回は「経絡」を意識した流れを整える・止めない治療で良い効果が得られた。