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逆子が直るワケ

2019-02-27

先日NHKで「ためしてガッテン!東洋の神秘 はり治療SP」がやってましたね。
この内容がきっかけで、来院くださった新患さんも数人おられます。テレビの影響はやはり大きいです。

 

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ですがいつまでも「東洋の神秘」として鍼灸が扱われていると、受診率7%から値が上がる日は来ないことを鍼灸師は重く受け止めています。

 

取り上げられた実証例の一つになぜだか分からないがこのツボにお灸をすると、逆子が直るという形で取り上げられていました。

 

鍼灸は魔法ではなく、緻密な理論と現象を観察・把握する技術によって成り立ちます。
その一例として今日は患者さんにお伺いした話のなかから「逆子がなぜ、はりで直るのか?」をテーマにしてみます。

 

逆子が鍼灸で直ることは有名な話だと思っていたのですが、当院の患者さんにすらまだまだ知られていないのが現実。
さらに逆子でお悩みの方が鍼灸という選択肢を知ったとしても、一度も頼らず帝王切開を選択される方も多いです。

 

手段問わず無事産まれてくれることが何より大切なことを踏まえた上で、直る可能性がある選択肢を頼れない理由は何でしょうか。

 

これは明確で、鍼灸治療によって逆子が直る理由が分かっていないから。(逆子体操も分からないはずなのですが・・)
神秘的な怪しい治療で、子供にもしものことがあってはと考えるから。ではないでしょうか。

 

選択肢があるにも関わらず、知らないことによってシャットアウトしてしまう現状がとてももどかしい。
だから鍼灸を施すことで起こる身体への作用を知った上で、患者さん自身が選択できる環境だけは整えておきたいと思っています。

 

そこで今回は逆子になる理由、鍼灸は身体にどんな作用をもたらすかを簡潔に解説してみます。

 

逆子の原因は下腹部の冷え

 

まず子供がなぜ頭を下に向けていたいのか?という点に、想いを馳せてみましょう。

 

理由は「血液が充実した暖かい場所で、ぬくぬくと過ごしたいから」です。

 

1番血液が充実した場所はどこでしょうか?
女性ではもちろん子宮になります。
子宮という毛布は上腹部にありませんよね?下腹部にあります。

 

なので頭を下にしていたいんです。
逆子になる理由は、下腹部が冷えているからといえます。

 

下腹部が冷える方の特徴は、上腹部(胃)の緊張癖が強いこと。
赤ちゃんは、充実した暖かい場所に頭を向けたくなります。

 

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胃の固さを充実と勘違いしてしまうんですね。
又、胃は熱を持ちやすいので暖かいといえば暖かいです。

 

これが簡潔にですが逆子になる要因といえます。

 

How Toではない逆子治療

 

テレビで逆子の灸として挙げられた2つのツボ、至陰と三陰交。

 

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至陰は丹田の背中側(腰回り)、三陰交は丹田のお腹側(下腹部)が温まる現象が、高い再現性で確認されています。

 

 

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なのでベルト状の下腹部周りを2つのツボを使って温めると、逆子が直りやすいんです。

 

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ですがただその2つのツボにはりやお灸をすればいい訳ではありません。

 

その人の身体の性質・構造を観察し、下腹部の冷えだけでなく、胃に極度の緊張があれば、胃の緊張を取るはりも必要、左右差を診てどちらのツボを使うかも判断する必要があります。

 

ここでも患者さんのお腹だけでなく、お身体全体を診る姿勢に変わりはありません。

 

逆子になると逆子体操やウォーキングを勧められますが、胃に力が入る仕様の身体で、頑張って体操や運動をするとどうなるでしょうか。

 

大半が胃の固さが強くなるだけで、一生懸命頑張れば頑張るほど逆子が戻りにくい状況が生まれます。

 

逆子体操を提案される時期が、下腹部に血液が充実して逆子が戻りやすい時期と被る。
さらに逆子になると必ず指導される方法なので、そもそもの絶対数が多く「逆子体操で逆子が直った」という声もあるのは当然です。

 

だから両方やって良いんです。逆子体操も鍼灸治療も。
鍼灸によって胃の緊張が緩和されて下腹部が充実すれば、逆子体操もより意味があるものになるでしょう。

 

とにかく選択肢はたくさんあるんだよ、後悔しない選択をしてもらいたいというのが、このブログで最も伝えたいことです。

 

逆子は症状や病気ではない

 

最後に・・逆子は敢えて「治る」ではなく、「直る」と表現しています。

 

逆子は症状や病気ではないんです。

 

「戻れ戻れ!」と祈りながらご自分と赤ちゃんに負担をかけてまで無理に身体を動かすよりも、赤ちゃんが下向きに戻りやすい環境を淡々と整えてあげる。

 

意外に鍼灸治療は、身体にとって優しい施術なんですよ。
受診段階は早ければ早いほど、お互い焦らずに治療に取り組めますので、28~29週目がおススメです。

 

32週を過ぎたあたりから、確率が落ちてきます。
最後の手段ではなく、病院と併用した最初の手段として活用して欲しいです。

 

紅露家も息子が横子で帝王切開がチラつきましたが、無事三陰交と至陰を中心とした鍼灸治療で元に戻ってくれました。
テレビと同じように、ゴロンッと動いてくれました。

 

実は今お腹にいる2人目の子も逆子気味です。

 

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どうなるかは分かりませんが、早めに施術しておくに越したことはありません。
またこちらは出産日記で報告したいと思います。

 

今回は逆子について取り上げましたが、どんな症状でも症状別に理論と起こりうる現象を把握したうえで、施術しております。

 

鍼灸師の頭をチラッと覗いてもらった、今回の投稿でした。
実際今同じ状況に直面している方、これからの方、周囲で困っている方の参考になれば幸いです。