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鍼灸師がAIに代用されない本当の理由

2025-03-05

 

診療終わりの15時頃。午前中にあった娘の生活発表会の白雪姫役の動画を見て可愛すぎるとニヤニヤし、丸亀製麺に行くタイミングを見計らう中、養生院のドアが開き身に覚えのある男性と娘さんが2人。

 

今年の1/7(火)にご逝去された患者さんのご主人とその娘さんでした。

 

京都府と長野県にお住まいの娘さん2人が、お父さんお母さんが1年半通った中山寺という地域に自分たちも一度行ってみたいと帰省して周囲を探索し、当院に寄ってくださったようです。この後は毎回施術終わりに2人が食べに行っていたお蕎麦屋さんで食事をするとのこと。

 

2023年5月から24年12月までの間に来院された回数は131回。70歳を超えたご夫婦が片道高速45分掛けて毎回通う日々に思いを馳せると、自然と身が引き締まる思いで施術に臨んでいたことを思い出します。

 

ご主人の運転は上手で、奥さんは助手席でウトウトしながら気付けば当院に着くというのが常だったようです。奥さんは施術を受け、ご主人はテーブルでパソコンを叩いたり新聞を見て過ごす。仕事熱心だなと思っていましたが、今日初めて職業を聞いて納得でした。そして帰りの駐車場までの道のりは2人腕を組んで歩く。この光景は今でも目に焼き付いています。

 

毎晩電話で話すという仲の良い娘さんにも今日初めてお会いでき、娘さん曰くお母さんは当院の治療・話したことに関して感じたことや、月に数回LINEアカウントの友達に向けて送るメッセージについて、毎回楽しそうに共有してくださっていたとのこと。

 

治療はもちろん、毎回のやり取りまで楽しみに来てくれていたことは、目に見えないものを大事にする自分にとっては嬉しい限りです。

 

仕事や家事も何もやる意欲がわかない、食欲もない、お通じも出ないというところから、人として日々を豊かに生きることができるところまで回復したとはいえ、元々の来院目的であった眼瞼痙攣という症状自体が、劇的によくなった訳ではないんです。

 

癌が分かったときも、やっぱり不安や恐れはあるがいつ死んでも後悔はないという言葉を聞いて、最初来られたときの衰弱した様子とは見違える程の人としての強さを感じました。

 

今抱えている症状が、今自分が不都合に感じていること、できなくなったことの全ての原因ではない、ということを最大限表現してくださった方のように思います。

 

それでも抗がん剤治療後の体力と精神力の衰弱ぶりがあまりにも急速だったこともあり、改めて色々考えさせられました。

 

今日3人が来てくれたことは、施術家冥利に尽きるというか改めてこの仕事に自分の熱量全てを掛けていて本当によかったと感じます。ちゃんとこちらの熱量と想いは届いているんだなと。

 

AIに代用されない仕事に鍼灸師も含まれていますが、米粒以下のツボに鍼をする技術がAIにはないからではなく、人を人として見ることでしかできない施術・関係性があるからだと考えています。

 

それでは本格的にお腹も空いてきたので、丸亀製麺で釜揚げうどんの日を満喫するといたします。