症例の紹介

腰痛

症例7:立ち仕事による腰の痛み

DATA

患者: 女性 20代 西宮市
来院: 2016年7月
鍼灸の経験 なし

症状の特徴と経過

サービス業で立ち仕事の為、普段から常に腰に違和感がある。立ちっぱなしの状態が続くと腰の痛みにより座りたくなる。前日の仕事終わり、腰の違和感が痛みに変わり、休日を利用し来院。

治療の内容と経過

腰を後ろに反らす、右に傾ける・捻る動作で左腰(T9-T10)に痛み出現。今朝起きた際、鼻炎症状が併発。
動作時痛が強い状態は足の疲労が関連し、 股関節の動きを妨げていると考え膝周囲のツボに2ヶ所を選択。1本目で、反らす動作の痛みが無くなり2本目で傾ける・捻る動作の痛み消失。
早めの改善が出来た為、同時に鼻炎の治療もおこなう。
脈・舌・お腹の観察から、顔面・胃腸に熱がこもった状態と考え熱の通り道を作る為、背中・お尻に1本ずつ。
最後に胃腸の弱りを補う足のツボで仕上げた。
後日、メールにて腰の痛みは無く鼻水も施術後すぐ止まりその後も出ていない。詰まり感が少し残るとの事。

同時に治療した症状 風邪、鼻炎
使用した主なツボ 足陽関 R、委陽 L、胞盲 L、おろし L、公孫 L

考察

動作分析、腰の痛む場所から足の外側にある腓骨に原因があると考えた。腓骨という骨は膝から足首を繋いで螺旋運動を助けており、この骨の動きが悪くなると立ち上がる・座るという単純な動作さえも困難になってしまう。
ツボの効力を改めて実感した症例である。

症例6:妊婦さんの腰痛・悪阻

DATA

患者: 女性 40代 宝塚市
来院: 2016年2月
鍼灸の経験: あり

症状の特徴と経過

去年お母さんのご紹介で2度来院され、腰痛・肩こりと貧血に対する治療をおこなった所、2人目のお子さんを2年振りに授かった。1人目のお子さんを授かった妊娠中は、体調が非常に悪く出産までの期間は悪阻と貧血で外に出る事が出来なくなり、帝王切開で出産されたので出産前後含め2年間寝込んでしまい、産後は呼吸する事さえも痛く体重も20キロ増加した。この辛い経験があるので2人目をもし授かれた際は体調をしっかり調えて出産に臨もうと心に決めていた。

しかし、当院に行きたいと思いながらも行けない期間が1ヶ月続いた結果、悪阻がひどくなり治療を受ければ楽になるんだろうなと思いながらも外出そのものが出来ず家事もままならずずっと伏せている状態が続く。
年が明けた前回治療から4ヶ月が経過した2月、ようやく悪阻がピークを過ぎ落ち着いてきたので来院。
肩こり・腰痛が辛く、お子さんの事もあって睡眠は3時間毎に目が覚めてしまう。現在妊娠5ヶ月目である。

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治療の内容と経過

悪阻がひどかった疲れと常にお腹の子供と血液を共有しているので、貧血気味。
肩こり・腰痛は動いていない時間が長かった分、骨盤は後ろに倒れ腰が丸くなっている。
今回の出産も帝王切開は決まっているのでそれまでに、子宮循環の回復と気血を充実させる事を目的に、「虚」(弱り)に対しての施術方針を立てる。
同時に筋力低下は連動性でカバーして頂く為、緩やかな自動運動を誘導しておこなってもらう。
身体を温める・補うツボへの鍼を主とし、緩やかな循環にしたいので刺激は弱めに調整する。
施術後、身体がポカポカしてリラックスできたとのお言葉。

【2鍼目】2週間後、経過を尋ねた所4~5日後からよくなり始め、腰の痛みがすっかり良くなり悪阻も時期的なものもありますがお陰様でほぼ治ってきましたとのご報告。脈が速くみずみずしくなっておりお腹が一気に大きくなっている。
うつ伏せが出来ないので上向きと横向きで施術。朝が起きずらいのと熟睡出来ない訴えを改善するため、前回施術に加え、安神作用を高める手と首のツボに鍼をおこなう。又、下半身の血液循環を高める為に内転筋・腸腰筋・お尻の筋肉を気持ち良く動かしてもらう様に誘導する。

【~6鍼目】同様の施術を月2回ペースでおこない腰痛・肩こりはほぼない。朝起きられる日も増えてきているが、熟睡感・貧血含め一進一退の状態である。引き続き出産に向けて一緒に準備をしていきたい。

同時に治療した症状 肩こり、不眠
使用した主なツボ 三陰交R、公孫L、太谿R、曲池R、外関-内関R(透鍼)

考察

産後骨盤矯正が流行しているが、産後お身体が弱ってから後追いするよりも、妊娠中に身体を調整・強化して出産に臨んだ方が産後の状態は明らかに違う。その中で妊婦さんの身体の骨格を調えるには内転筋(内もも)・腸腰筋(太ももの付け根)の調整が重要で、ここが固くなると出産時骨盤が開きにくくなると考える。
また、妊婦さんは出産前後、身体の中で天変地異が起こる程の衝撃が加わる。
それに対する身体の準備・気血の充実の為には、サプリメントや骨盤体操以外にも方法はある。
鍼灸治療は産前産後の妊婦さんにとって、安心安全かつ大変効果的な手段である事を幅広い層の方に知って頂きたいと切に願う。

患者様の声

宝塚市
女性 40代

赤ちゃんはお陰様で今のところ順調に育っております。
まだ数回しか行かせてもらっていませんが一回一回の治療効果の大きさを実感しており、元気にしてくださったお陰で妊娠も出来たと感謝しております。
またどうぞよろしくお願い致します。
【お問い合わせメールより】

症例5:腰が伸ばせないお尻の痛み

DATA

患者: 女性 33歳 川西市
来院: 2016年2月
鍼灸の経験: あり

症状の特徴と経過

介護職の仕事柄、常に腰に痛みと違和感があり本日昼から患者さんを抱き上げた際に痛みが増強。
まっすぐ立つ事が出来なくなりこのままでは明日からの仕事に影響をきたすと考え、ネット検索で「腰痛」を検索したところ、当院を見つけてくださり来院。特に腰の前後屈、左足を挙げた際に痛みが強くなる。

治療の内容と経過

来院された時は、腰を前かがみにされ歩くのもやっとの状態。痛い場所を確認した所、右のお尻(中殿筋)の自覚痛・圧痛が強かった。
仰向けで膝を立てた状態でゆっくり寝て頂き、後ろ半身の緊張を取り除く右手足のツボ2か所と急性の痛みに即効性のある右手甲のツボを用いて鍼を入れた状態でゆっくり腰を動かした。抜鍼後、立って状態を確認して頂くと前後に動かす腰の動きが大幅軽減。
ここでお話を聞きながら舌・脈・お腹を再度確認し、過剰な水分とストレスにより熱がこもった気血の滞りを巡らせるツボを手足・背中に用いて初診を終えた。

【2鍼目】8日後、治療後から痛みが10→2まで落ち着いていたが、昨日の仕事中痛みが増強したという事で、再度身体に炎症が起こっている事を確認。清熱作用があるツボを中心に気血水の巡りを良くするツボを追加し、股関節の連動性を高める手技を3手おこなう。
治療後、痛みは落ち着き腰のアーチも適度に安定した状態で帰って頂く。

【4鍼目】週1回ペースの4回目、腰痛は無くなり同時に2鍼目に訴えていた生理不順が28日周期の日にピッタリきて喜び合う。次回以降はふとしたきっかけで起こる頭痛治療を中心に、生理周期の安定を目指す。

同時に治療した症状 生理不順(月経周期がバラバラ)
使用した主なツボ 後谿R、申脈R、腰腿点R、内関R、公孫L、三陰交LR、肝兪L

考察

急性で来られた患者さんにはまず動きを改善して頂く事を優先し、問診は簡潔に。
動きが改善された後はなぜ腰が痛くなりやすいかという病因を考え、気血水の滞りを改善する治療を徹底しておこなった。身体全体の調整をおこなう事で腰はもちろん、生理不順も同時に解決された症例である。

症例4:介護で抱き上げた際のぎっくり腰

DATA

患者: 女性 40 代 尼崎市
来院: 2015年12月
鍼灸の経験 なし

症状の特徴と経過

養護学校勤務の為、身体を酷使する事が多く今年の夏から慢性的な腰の痛みを感じるが、 病院に行く程ではないと思い違和感を抱えたまま、日々仕事に励んでいた。
11月中旬、生徒さんを抱き上げた際、腰に激痛が走り見動きが取れなくなる。
その日は何とか仕事を終え、家で安静にすると痛みは少し軽減された。病院に行く時間も取れずコルセットを巻いて仕事に取り組む。半月が経ち痛みは少し軽減されたがコルセットは外せず身体が動かしにくいままで仕事に支障をきたしている為、当院患者さんである上司の紹介で来院。特に前屈から抱き上げる、腰を反らす動作で腰の痛みが増強する。

治療の内容と経過

身体の極端な弱りによって気血津液を巡らせる力(推動作用)が失われた事で、痛みが腰に残る状態が2週間経っても続いている。動作時痛の特徴からは仙腸関節(お尻の骨と股関節を繋ぐ関節)と腰椎の動きの改善も必要と考えた。

過剰な水分の排出・身体を補うツボを中心に、身体の勢いを後押しするツボを追加。 関節の連動性を回復する手技を3手おこなう。施術後、2つの動作時痛が大幅に改善し痛みも 10→3 まで落ち着く。

【2鍼目】1週間後経過を尋ねると、施術翌日熱が出て汗が一気に出たとの事
実はこの患者さん、よく喉風邪を引かれるが熱は出ず咳喘息を慢性的に持っていると聞い ていた。これは身体の抵抗力が落ちているからと考えていたが、施術翌日に熱が出た事は鍼灸のツボの効力が発揮され、身体の力が補われた事による反応である。 咳喘息も3日間続いた様だが、現在は回復して腰の痛みも3のまま経過しているので、今回は勢いよりも胃腸を補う治療を主とする。

【3鍼目】2週間後腰痛は完治し、さらに毎月生理2日前から起こる腹痛も今回は 緩和されているとの嬉しいご報告。年末で長期休暇に入る為、一旦ご卒業頂き再度症状が出現した際、来院予定。

同時に治療した症状 月経痛
使用した主なツボ 太衝 R、間使 R、三陰交 L、衝陽 LR、後谿 R、申脈 L

考察

施術後、熱が出た事は結果論としては良かったが初診後「熱が出るかもしれません」と予後を患者さんにしっかり伝えられるか否かで腕の良い鍼灸師かの一つの判断材料となる。
今回この内容を患者さんに伝えられず一時的に不安にさせてしまった事は反省すべき 点で、患者さんの予後を把握しながら治療する力量を磨き続ける必要があると強く感じた症例である。

症例3:重い荷物を持ち上げた際のぎっくり腰

DATA

患者: 女性 50代 宝塚市
来院: 2015年10月
鍼灸の経験 なし

症状の特徴と経過

介護職で朝に重い段ボールを持ち上げた際、左背部に激痛が走る。整形外科に行こうか職場の同僚に相談したところ、当院をご紹介頂く。朝に比べて痛みは少し緩和されたが前屈が出来ない。
同時に腰が痛い為、常に力が入っていたのか40年前のムチ打ちにあってから痛む首の状態も悪化。ノド風邪をよく引く。

治療の内容と経過

触診で左背部の痛みを確認。食生活や舌・脈の状態から過剰な水分に熱が絡まり、気血の流れが極端に悪くなっていたのでぎっくり腰がいつ起きてもおかしくない状態だったと考える。

【1鍼目】湿熱を動かすのには時間が掛かるがとにかく熱を冷ます・過剰な水分の巡りを改善させる事に重点を置いたツボに鍼を用いた所、舌に潤いが出て舌全体の赤みが和らぐ。その他に過剰な水分の排出に加え本質の「肺」「腎」の気化作用を高めるツボを手足に取り、さらに腰を前屈しやすくする為の太もも裏のツボを用いた。
施術後腰の前屈可動域は大幅に広がり、腰・肩の痛みも10→5に緩和。

【2鍼目】1週間後、肩・腰共に痛みは無くなり以前から常に気になっていた首の痛みも軽減され喜ばれる。
前回同様の施術だが比重を根本治療の気化作用の改善に重きを置いて施術。痛みが完全に無くなったので一先ずご卒業頂き様子を見て頂く。

同時に治療した症状 風邪
使用した主なツボ 陰陵泉L、外関L、臨泣R、殷門L、公孫LR、太谿LR、列缺R

考察

この患者さんは40年前にムチ打ちで痛めた首も左、5年前に断裂したアキレス腱も左と左半身が常に滞りやすい状態になっている。この滞りに拍車を掛けるのが内因の湿熱である。
起こってしまった事を悔いても仕方が無いが、他の人よりも左半身に何か症状が出る可能性が高いという認識は必要。軸足を出来る限り中心に保つ意識や介護で踏み込む足は右足を中心に、カバンはリュックもしくは右手に持つ等ちょっとした自分の身体への配慮が再発の予防に繋がると考える。
今回のぎっくり腰の治療は湿熱に対しておこなったが、これからの事を考えると「肺」「腎」の気化作用を高め炎症に対するこまめな清熱が必要であり、これがノド風邪や咳喘息、アレルギーの予防にも繋がると考える。

症例2:たびたび起こる腰痛

DATA

患者: 女性 60代 伊丹市
来院: 2015年10月
鍼灸の経験: あり

症状の特徴と経過

たびたび腰が痛くなる事はあったが、寒い日が続き両膝のお皿下にシクシクとした痛みも出てくる。
動いている時は多忙の為、痛みを忘れているがご飯を食べる時やホッと一息ついた時などの座った際に痛みを強く感じる。どこかで治療を受けたかったが、諸事情でバタバタする日々が半年間続きようやく一段落した所、前職場のスタッフさんから当院の事を聞き来院。

治療の内容と経過

明らかな立ち仕事のハードワークと諸事情により身体の疲労が限界を超えており、忙しさで何とか紛らわせていた状態。
特に下半身の力が低下している事が腰痛・膝痛・下半身冷えの原因であり、それによって相対的な熱が上に挙がり耳鳴り・目の疲れ・動悸・胃もたれ・夜眠れない等の症状が起きていると考えた。

【1鍼目】下半身の力をつける・身体を温めるツボを中心に、上半身の乾いた熱を冷ますツボを追加した。腰周りにはマッサージを加え、リラックスして頂く事に重きを置く。施術後、久しぶりに何も考えずリラックスする時間を過ごせた様で眠気も出て、腰・膝も温まる。

【2鍼目】1週間後、腰の痛みはほぼなくなり膝の痛みも10→5に軽減。前回同様の施術をして次回以降、身体の根本的な力の底上げによって耳鳴りの改善に取り組みたかったが卒業を希望された為、希望を尊重しご卒業頂く。

同時に治療した症状 耳鳴り・不眠
使用した主なツボ 関元、太谿R、合谷L、後谿R、申脈L、脾兪R、腎兪L

考察

病気や症状は、原因(外因)があって、またそれを受け入れてしまう身体の弱った状態(内因)が重なることで初めて起こると考えられている。よって病気になる原因があっても体力がしっかりしていれば病気にはならない。今回はこの内因が極端に落ち込んだ事が原因の症例である。元々ゆとりある穏やかな心をお持ちなので、内因を調整した事で大変すみやかにに症状が改善してくれた。

症例1:朝起き上がった際のぎっくり腰

DATA

患者: 女性 40代 尼崎市
来院: 2015年8月
鍼灸の経験: なし

症状の特徴と経過

以前から仰向けで寝る姿勢が辛く、朝起きると必ずうつ伏せになっている。今朝いつもの様にうつぶせの状態から起き上がる際、腰に強い痛みが出現。腰を反らす事が出来ず、階段の上り下りで腰に鋭い痛みが響く。普段は放置して様子を見るが、前かがみの姿勢で職場を移動していたのを社長に指摘され、状態を伝えたところ当院をご紹介頂く。

治療の内容と経過

腰を反らせる可動域の極端な低下に加え、普段の便秘・頻尿、水分をよく飲む、朝晩ほとんど食事を取らず夜に思い切り食べる生活習慣などを表す舌・脈の状態により、過剰な水分が気血の流れを滞らせている。
腰が反れないのは元々反り腰の影響が大きく、太ももを挙げる筋肉が硬くなっている事が原因と考えた。

動きの側面から、太もも前の付け根を緩める足の甲のツボと太もも裏のツボに1か所ずつ。流れの側面から過剰な水分の巡りを改善させる手足のツボを使用した。施術後、腰を反らす可動域は倍に広がり痛みは10→5に軽減。
痛みが残る様ならもう1度来て頂くよう提案する。その後来院された社長さんに状態を尋ねた所、施術3日後に痛みが完全に消失していたとの嬉しいご報告。

同時に治療した症状 肩こり、左顎関節症
使用した主なツボ 太衝LR、承扶LR、外関R、臨泣L、陰陵泉L

考察

なぜ、腰が反るのかは太ももの前の筋肉の緊張により骨盤が前に引っ張られた結果と考えた。
よって太ももを挙げる腸腰筋という筋肉を動かしやすくした所、身体の前後のバランスが整い症状がすみやかに改善した。その際も局所を使わず筋肉の張力を調える事で筋肉が動きやすくなり、次の日身体にダルさがでる事もなく仕事に臨んで頂けた。痛みを止める・筋肉を単に緩めるだけではこの様な即効性は生まれないはずである。