症例5:頚椎ヘルニアによる腕の痺れ
DATA
患者: | 男性 60代 伊丹市 |
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来院: | 2016年4月 |
鍼灸の経験 | あり |
症状の特徴と経過
治療の内容と経過
辛い痛み、痺れによる疲労と飲み続ける薬の影響で、お腹は硬く全身の緊張が強くなり、身体が乾いた状態。足は汗をかきやすく、逆に背中から全く汗が出ない。
お腹の固さを柔らかくする足のツボに鍼をおこなう。腕の痺れには背中のツボに鍼を1本。
施術後、痛み・痺れは10→7に緩和。飲酒量の減量、服薬は痛みに耐えられないときのみにお願いする。
2診目、前日までは10→5まで緩和していたが現在は8。薬の服用は1日のみ。足の自汗はなくなり、お腹が柔和になっているのを確認。痺れはあるが腰痛が気になりだした。
3鍼目、仕事量が変わらないにも関わらず、痺れの頻度が激減。
腰痛の方が優先順位が上がり、下痢症状が気になる。
2週間後、痺れは10→2まで落ち着き、さらに1週間後の5回目痺れは消失。
下痢症状も緩和され、腰は座ったときにお尻が痛い程度。
治療開始から痛み止めは初診後の1回のみで、無事手放すことができた。
3ヶ月ぶりの来院時は腰痛のみで、腕の痺れは変わらず消失したまま過ごせている。
同時に治療した症状 | 腰痛 |
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使用した主なツボ | 後谿LR、申脈L、太衝L、陰谷L、公孫LR、肺兪L、魄戸R |
この患者さんは弟子時代の生活が現在も染み付いており、身体の緊張が全く抜けない状態だった。これが気血の滞りを薬や手技で一時的に取り除いても再度自分で滞りを生みだし、痺れが一向に改善されない原因と考えた。
事実、症状が慢性化されている患者さんはこの様な状態が多く、頭では力を抜きたいが身体が反応してくれない。
この様な時に、いくら力を抜いてくださいと伝えても無理な話だが、鍼灸においては身体の細胞レベルに一瞬で直接刺激を伝える事が出来るので、患者さんが抵抗した頃には既に刺激は奥深くまで行き届いている。
鍼の生体を警戒させずに微細な侵害刺激が出来る特性は、この様な患者さんにも強みがあると感じた症例である。
症例4:雨の日に悪化する肩・首の痛み
DATA
患者: | 女性 40代 宝塚市 |
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来院: | 2016年4月 |
鍼灸の経験: | なし |
症状の特徴と経過
朝昼は職場でキッチンの立ち仕事、夜はお子さんのお食事や家事で結局1日中立ちっぱなしの状態が週5日。
20年前交通事故でムチ打ち状態になってから常に肩・首のこりが気に掛かる。
さらに最近では疲労が蓄積し特に雨が続くと偏頭痛がひどくなる状態が続き、痛み止めの服用も効果が無い。特に朝が痛みを感じる。当院の前は仕事の道中で通り掛かり気にはなっていた所、友人の紹介を受け来院。
治療の内容と経過
立ち仕事が続いている生活習慣・下半身の冷えが強い状態・慢性的な咳が続いている事などから、自分の力で身体を温める事が出来ない状態が様々な症状の原因と考えた。
下半身の力をつけるために足のツボに鍼、お腹のツボに温灸をおこなった。
身体を動かした時に咳込んだ状態は、施術後緩和され身体が温まる事で肩・首の痛みも緩和された。
【~4鍼目】1週間後、首の痛みは緩和されたが朝起きた際の頭痛・咳が残るため前回の施術に加え、巡りの悪い水分を排出し身体の冷えを抜く足のツボを用いた。
そこから1週間のペースで来院頂いた4回目、朝の疲れは残るが頭痛・肩こり・首こりは緩和された為、ひとまずご卒業。また疲労がピークに達する前に来院頂く予定。
同時に治療した症状 | 肩こり、頭痛、慢性咳 |
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使用した主なツボ | 復溜LR、関元、命門、脾兪L、陰陵泉L |
肩・首こり、頭痛、慢性咳の原因は身体が冷え切った事により起こっていると考えた。局所に触れなくても全身の血液循環を高め身体を温める方向に施術していく事でおのずと乾いた上半身の熱は下に降りていき、巡りが悪くなっている下半身の血液は釜で炊いたお風呂の湯気の様にゆっくり上に挙がる。温かな血液が頭・肩・首に行きつく事で筋肉も緩和された。
この様な根本の力が弱っている患者さんの場合、治療をしてから首・肩に直接触れるのと最初から首・肩をいじるのでは治療後の効果は雲泥の差があるはずである。
症例3:頚椎ヘルニアによる首の痛み
DATA
患者: | 男性 36歳 伊丹市 |
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来院: | 2016年3月 |
鍼灸の経験 | なし |
症状の特徴と経過
1年前、整形外科で頸椎ヘルニアと診断され通院していたがあまり効果的な治療が無く、通っているトレーニングスタジオの紹介で来院。
仕事柄、デスクワーク+手作業が多い為、常に首に負担が掛かり痛みが右に偏っていた。頸椎ヘルニアと診断されてからは配属が変わり営業職となった為、以前のようなどうしようも無い痛みは緩和されたが、首を動かすと詰まり感・痛みは相変わらずであった。トレーニングスタジオで身体を動かす事で筋肉がほぐれている感覚があり、体調も良くなってきている。
治療の内容と経過
座り仕事+手作業、現在は車での移動・出張が続いている事から、お尻の圧迫・手の疲れにより、首に負担が掛かっていると観察。
動かす中での痛みよりも、姿勢を保つ際の痛みが主であると考え、太もも裏、お尻、腰のツボに1本ずつ。
さらに首を動かしやすくする為、背中のツボに1本。活法手技にて、手に働きかけ頚部の動きを良くする施術をプラス。
最後に肩の痛みの部位・四診から、胃腸に弱りがありこちらも肩に影響していると考え、胃腸を補うツボ2ヶ所に1本ずつ。施術後、頚部の痛み消失。動きも大幅改善。翌日以降も状態は緩和。(体験談にて)
現在はメンテナンスの為、月1回来院。
同時に治療した症状 | 腰痛、手足の倦怠感 |
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使用した主なツボ | 殷門LR、腰腿点【1】R、T4【1】LR、足三里R |
問診、動きの動作観察から、首の痛みの原因が手足に存在した症例。
首を触ってもある程度の改善は見込めるが、一気に首の緊張だけが緩んでしまうと今まで踏ん張っていた部分が脱力し次の日に影響が出ると考えた。
症例2:足の疲れを伴う肩こり
DATA
患者: | 山脇弘也さん 30歳 伊丹市 |
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来院: | 2016年7月 |
鍼灸の経験 | あり |
症状の特徴と経過
治療の内容と経過
肩こりを訴える部位は、ザ・肩こりと言われる肩がこった時に手を回したくなる所である。常に重りを背負っている感じ。身体の状態は舌・脈ともに小さく、お腹も柔和性が低下しており、疲労が蓄積した身体の弱りによる血液の滞りと捉えた。
上半身と下半身の熱量のバランスを調整するため、下半身の血流を良くして足裏を緩めるツボ、身体を温めお尻の緊張を解くツボ両側に鍼をおこない、15分じっくり置鍼した。抜鍼後、足が暖まっている感覚を得る。足を踏ん張って頂くが土踏まずの痛みは無く踵のみ残る。
うつ伏せで踵周囲と連動する膝裏のツボと、肩のうなじを緩めるツボを加え、最後に上半身の熱を冷ますツボを背中に捉えた。施術後、主訴は全て緩解。
3日後、電話にて確認した所施術後から毎日熟睡でき、主訴も全て緩和されて調子が良いとのご報告。
同時に治療した症状 | 不眠、殿部痛 |
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使用した主なツボ | 三陰交LR、築賓LR、懸鐘R、心兪LR、李氏膝上穴L |
営業職などの歩く時間・車の運転が長いお仕事の場合、股関節・足の負担が原因で肩こりが起こる事が多いように感じる。しかし、この患者さんの様に自覚症状を足に感じる方は少ない。足にまで自覚症状を感じるのは、それだけ疲労がピークに達していたからだろう。身体に重りを背負っている・疲れが取れない症状には、全身的な増強が必要でありその為には下半身のツボにアプローチする事が改善の近道であると考える。
症例1:3年前から痛みが取れない肩こり
DATA
患者: | 男性 80代 宝塚市 |
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来院: | 2015年9月 |
鍼灸の経験 | あり |
症状の特徴と経過
治療の内容と経過
四診の結果、身体の気血水の循環が滞り、上半身に乾いた熱がこもり、下半身も乾燥した状態で全身の皮膚の潤いが極端に低下している事が原因と考えた。聞く所によると、自分でも身体が乾燥している自覚があり水分が足りないと考え、努めて摂取しているがその分お手洗いの量が増え便秘が続く様にも感じている。
実際に舌は右半分に乾いた苔がへばりつき、左半分は苔が全くない偏った状態。脈は底まで打ってはいるが勢いがなく、身体の深い所に鬱滞した気血水の存在が読み取れる。
【1鍼目】胃の気の回復を主として、上半身と下半身の循環改善を得意とするツボ。さらに年齢と共に失われる「陰」を補うツボを追加する。
初鍼後、舌の苔が潤って薄くなり、肩こりは10→3まで落ち着くがいつもしてもらった後はマシになるという事で経過を観察。
【2~3鍼目】10日後、変化がないとの厳しいお言葉。
しかし、脈の改善とお腹の柔軟性を感じ取れたので、身体の巡りを改善させるツボを中心に施術。施術後再度良くなり、旅行前日3回目の来院時は久しぶりに肩こりを感じないとの嬉しいご報告。
旅行後に奥さまが来院された際、ご主人の状態を尋ねたところ行き帰り共に快適な旅を満喫し、長距離運転による多少の肩こりはあったが全く苦にならなかった様である。
同時に治療した症状 | 便秘・目のかすみ |
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使用した主なツボ | 外関LR、陰陵泉R、足三里L、合谷R、太衝R、肺兪LR、腎兪L |
初回後の変化が患者さん自身には分からなかったが、脈やお腹など身体変化の反応を確認できたので安心して今日で緩和されますよと予後を直接伝える事が出来た。患者さんの訴えだけに左右されるのではなく毎回のお身体の変化を術者側が把握する重要性を改めて認識出来た症例である。
それにしても80歳で全国を車で旅して回る馬力には驚嘆する。危ないと思う気持ちよりも、ここまで来ると生涯現役で車に乗り続けて欲しいものである。その健康状態を保って頂く為に、少しでも助けになる事が出来ればこんなに嬉しいことはない。