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鍼は本当にクセになるのか考えてみた

2017-02-01

初めて鍼灸(はりきゅう)を受けられる患者さんによく聞かれる質問ランキング2位がタイトルの内容です。ちなみに1位はお馴染みの「鍼って痛いですよね?」
「鍼って痛いですか?」ではなく念を押す所が患者さんの不安を強く感じ、術者側はどうすれば少しでも安心して鍼灸を受けて頂けるかを常に考える必要があります。

 

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さて、今回のメインの答えですが「癖にはなりません」
そもそも「癖になる」とはどういう事か?なぜ癖になってしまうと思われる方が多いのかを考えてみました。

 

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癖になるとは?

 

意義素
類語
やめられない、何度も味わいたいといって繰り返してしまうさま
癖になる・病み付きになる・癖がつく・中毒(患者)になる・無しではいられない・ 無しではいられなくなる・ 無しでは生きられない・ 無しでは生きられなくなる
気持ちがよくてやめられなくなるさま
癖になる・病みつきになる
物事に熱中して止められなくなること
病みつきになる・抜け出せなくなる・止まらなくなる・中毒になる

 

                                                                                                                      出典:Weblio類語辞典


想像以上にネガティブな言葉ですね。「~しなければならない」という無理やり感が強く、鍼は一種の薬物中毒だと思われている方もまだまだいる気がしてきました。ではなぜそんな印象がついてしまっているのでしょうか?

 

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そもそも鍼がどんなものか知らない

 

手術やインフルエンザ注射、歯医者の虫歯治療をする時に患者さんが「癖になりますか?痛いですか?」と聞くことはないと思います。これは目的意識がはっきりし、結果どうなるかがある程度想定できるからでしょう。その為の痛みや通院なら仕方がないと理解しているからです。・手術→原因の悪いところを取り除く→悪いところがなくなり元気になれる
・インフルエンザ注射→1or2回受ければかかりにくくなる→また来年も受ければよい
・歯医者→虫歯を治療する→虫歯が治り歯が痛くなる→また痛くなれば通院しよう

 

話が少し脱線しますが、日本では病気や症状を「治してもらう」という考えがまだまだ主流です。受け身の姿勢ですね。これは日本の手厚い保険制度が逆に我々国民を甘えさせてしまった側面があります。労働者の8割以上が会社員で所得税や年金、健康保険を給料から天引きされるので税金を支払っているという感覚が芽生えにくいのと同じように思います。
ですが実際治っていくために必要なのはあなたの身体の力そのものです。
風邪薬が風邪を治すのではなく強くなったウイルスや病原菌をやっつける応援を薬がしてくれ、最後治っていくのはご自身の力です。

手術も悪いところを取り除く事は出来ますが、治った訳ではなくそこから以前の状態に治していくのはご自身です。

 

周囲の助けを借りながら最後は「自分で治していく」。その為の行動を主体的におこなえるかが大切です。ここに気付いて頂ける施術をする事が、鍼に限らず「癖にさせない」大きな要因だと考えます。

 

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話を戻しますが鍼はどんなものだと想像しますか?
鍼は注射針と混同され痛み止めとしての鎮痛作用という一般的な認識が強いと感じております。

 

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さて、皆さんは10年程前、岡野工業株式会社が開発したナノパス33という注射針を御存じでしょうか?痛みのない注射針です。
子供の糖尿病患者のインシュリン注射に大いに役立つという事で話題になり、グッドデザイン賞も獲得しました。なぜ、ナノパスが痛みを感じないかというと、針があまりに細いので、人間の痛みを感じるセンサーが、刺さったのを感知できないためです。
この、世界一細いと言われるナノパスの直径は0.2mm。一方、鍼灸で使う「はり」は太さ0.1〜0.2mmです。「ナノパスより細い」のです。そのため、鍼灸の「はり」は痛みのスイッチをすり抜け、ATPを発生させず、脳に痛みが伝わらないので、痛くないのです。ただし、痛みのスイッチに直接触れてしまうことがごくたまにあり、痛い事もあります。それでも、「はり」が髪の毛よりも細いため、それほど痛くありません。
女性に言わせると、毛抜きで毛を抜いた程度の痛みと一緒だという事です。

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鍼の局所鎮痛効果は24時間~48時間といわれています。その為、腰が痛い患者さんに対して腰に鍼を打つと、24時間鎮痛作用があるので終わった直後は緩和された気になりますがまた次の日には痛くなる事が多いです。強い局所マッサージも同様でこれが「癖になる」原因です。患者さんが体験した治療の大半はこの内容ではないでしょうか。

 

よって、まずは鍼がどういう物でなぜ癖にならないかをキチンと説明する事が術者側には必要と認識しております。

 

慰安店のような治療院が増え、鍼灸院との差が分からない

 

治療院側が「慰安」と「医療」の違いが曖昧になっている事が問題です。

 

慰安は「お客さんと接している時間の価値を高める」事が大切です。
対価を支払う側も「その時の快感や気持ちよさ」を目的としています。よって依存を積極的に受け付けても何ら問題はなくポジティブな「癖になる」感覚は必要な方も多いでしょう。

 

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医療は「患者さんと接していない時間の価値を高める」事が大切です。
患者さん側も治療によってその後の日常の変化を期待して対価を支払います。手術が癖になると思わないのは、手術が医療と患者さんが認識できているからでしょう。

 

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では、なぜ鍼灸院がネガティブな「癖になる」と思われ医療と認識されていないのか?

 

様々な根深い要因があるのですが、その中でも一番は医療としての治療をするべき場所が、慰安ブーム・患者さんのニーズに乗っかり医療の名前・保険システムを借りた慰安店が増え、患者さん側も慰安と医療の垣根を見失っています。

 

様々な治療を体験し、通院し改善が見られなかった患者さんが最終手段として訪れるのが想像もつかない鍼灸院だからこそ、まず初回に「鍼は(も)癖になりますか?」と投げかけざる終えないのではないでしょうか。

 

紅露養生院の目的は依存されない関係に導くことです

 

鍼を鎮痛効果として使用していません
当院では「整動鍼」の理論を主としており、局所に施術する事はほぼありません。原因が局所にある時のみ使用しますが痛いところは発痛点であり、原因点は別にあります。
「痛み」をとる為の鍼ではなく、身体の本来あるべき「動き」を取り戻すため連動性に重点を置いたツボに少ない鍼数(2-6)でおこなうので、癖になる要因になりやすい鎮痛効果を目的としておりません。
そのため局所への鍼と比べ重だるくなる感覚や麻痺する感覚がありません。やってもらった感は少ないかもしれませんが、何となくではなく明確な変化をすぐに実感頂けます。身体が動けるようになる事で、痛みは自然に消えていきます。

 

「医療」としての治療を明確におこないます
私自身、マッサージの国家資格を持ち1年目はマッサージも治療として取り入れていましたが、2年目からは、鍼灸と碓井流活法のみをおこない医療としての立場を明確にしました。
最初の1ヶ月は以前から来院くださる患者さんがマッサージがない事で手抜きをされていると思っていないかなと少し心配でしたが、ありがたい事に目的意識が同じ患者さんばかりだったので鍼灸を主とした結果、余分な刺激もないので以前よりもリラックスしながら変化を実感してくださっています。

 

一人一人の安心感を提供できる院を目指します
当院には定期的なお身体のメンテナンスに来院くださる患者さんが3割程おられます。この患者さん方はおそらく「通院しなければならない」という思いではなく、「自分の身体のために通院しておきたい」という安心感の為に来院くださっています。
これは「癖になる」という認識外で捉えており、こちらから強要するのではなく、必要な時に必要な分だけ頼れる拠り所としての院を目指しております。

 

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初診で治療計画を明確に説明します
手術前に手術内容の詳細や手術日、退院日、大まかなリハビリ期の説明があるように、当院でもどのような流れで治療を進めていくか明確な説明を心掛けております。
基本的に症状が消失すれば一旦ご卒業してもらいますが、鍼灸治療はもう一歩先を見越します。
ぎっくり腰やむち打ち症など本人の土台が弱った事が原因と考えた症状が、3回の鍼治療で痛みはなくなったとしても後2回来て頂く提案をする事もあります。
これは、患者さんが卒業した後を見越した時にもう少し身体の土台を引き締め強くした方が再発防止に繋がると考えた時です。ただし、これは提案ですので、受け入れて頂くかはもちろん患者さんにゆだねます。癖になるよう誘導するのではなく、その後、長期間自立して頂くための最善策を提案致します。

 

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もう一度確認ですが、「鍼は癖になりません

ただし、「癖になるよう誘導する」事は可能です。メンタリストのDaigoさんに誘導されたら私でも癖になりそうです。これらの例が「治療」を受けたいあなたの慰安と医療を見分ける一つの判断材料となり、あなたに合った拠り所が見つかることを願います。