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活法から生まれる鍼の世界③本流の衝撃

2017-03-29

碓井流活法(かっぽう)に触れる

前回までの記事はこちら。

 

①整動鍼の衝撃

 

②脊柱と四肢を繋ぐ衝撃

 

今回は整動鍼の本流となる碓井流活法を実際に体験し、実際に2日間技をかけ合う事で見えた課題と明確になった進むべき道筋について書き留めておきます。

 

達人の間合いに触れる

 

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今まで私は武道・武術に触れてきた事がありませんでした。単純にサッカーバカだったからです。

 

よって「達人」という存在を目にした事がありませんでした。
鍼の神様には運良くご縁があり、触れる機会を頂きました。 今年お亡くなりになった事は以前のブログでも触れましたが、ご健在の時から主となって私たちに教えてくださる直弟子の先生も私から見れば神様のような存在です。引き続き、教えを請える環境は大変幸せです。

 

話は戻って。

達人とはどんな存在なのか気になるきっかけとなったのが、整動鍼にめぐり逢い施術の中であん摩マッサージ指圧をしなくなり、鍼灸(はりきゅう)という道具とツボの無限の可能性を引き出すためにはどうすれば良いか本気で向き合うようになってからです。

 

まだまだ鍼灸の可能性はこんなものではないと思えば思うほど、自分のすべき事が少しずつ見えていました。 このぼんやりした道筋を明確にする為には直接「達人」という存在に触れてみるしかないと考え、今回のセミナー参加に踏み切りました。

 

今回は特別セミナーとして活法研究会の技術顧問で碓井流活法の創始者、碓井誠先生が久しぶりに指導してくださるという内容でしたので、数年前から活法に触れている先生がほとんどでした。

 

個人的には活法をやっている先生と私には、作法や間合いにどんな違いがあるかを確かめる機会でもあり、技を掛け合う時間を楽しみにしておりましたが予想通り胸を借りる以前の違いを肌で感じる事が出来ました。勝負事では無いにしろ、やはり自分のできなさに悔しさはあります。経験の差で今回は仕方がない!と自分に無理やり言い聞かせました。

 

少し戻ります。
講師の方々・参加者の自己紹介が始まる前に、碓井先生が和やかに登場。

 

厳つい顔と似つかわしくないゆったりとしたたたずまい。達人と知っているから達人に見えるのか誰が見ても達人なのか定かではありませんが、私は迷わず後者だと答えます。鍼の神様に初めてお会いした時と同じ感覚でした。

 

「中心にしっかりとした軸を感じる」「居るだけで周囲を包み込む安心感がある。」
これがその道の達人の共通点のように思います。

 

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笑いあり、笑いありの自己紹介。鍼灸師は寡黙で話下手という印象はありませんか?
いえいえ、とんでもない。今の時代の鍼灸師は皆、話がとても上手なんです。

 

東京でのセミナーのはずが、ここは関西かと驚くような、オチの連続。それも全てにおいてキレが半端ない。関西出身、それもほぼ大阪寄りの兵庫県民が何の変哲もない、自己紹介で幕を引いたのはここだけの話に留めておきます

 

ついでをいうと活法メンバーのブログの面白さは鍼灸業界に置いても群を抜いています。
なぜなら活法研究会の副代表が、鍼灸師の7-8割が目にした事のある(鍼太郎推定)ブログの筆者だからです。まさに類は友を呼びます。私も呼ばれましたが、まだ発展途上段階です。

 

ほんの一部ではありますがご紹介させてください。
患者さんにとっても、気付きとなる内容の記事がたくさんありますよ。

 

http://blog.livedoor.jp/yoki/
鍼灸師のツボ日記

 

http://hariokyu.com/official-blog/
ドアのノックはゆっくりと

 

https://greennoah.net/?page_id=126

 

http://ibs-nagoya.jp/blog

 

いよいよ、碓井先生直伝21手の直接公開です。

 

今回どうしても聞きたかった質問がありました。

 

痛みを抱えた患者さんは少しでも痛みから逃れようと、偏った癖をがついた状態で全身に力を入れています。
「力を抜いてください」とお伝えしても抜けないことがほとんどです。患者さんは抜いているつもりですがガチガチに入っています。抜こうとすればするほど、力は入ります。

 

これは頭の意識でどうこうなる問題ではなく、脳や身体に直接訴えかける以外に方法はありません。
力が抜けない患者さんに力を抜いてもらうためにはどんな事を気をつければいいか?
碓井先生は力が抜けない患者さんに対してどのようにアプローチしているのかを聞きたかったのです。

 

力が抜けない患者さんに対して鍼は大変利点があります。
力を入れる間もなく鍼はすでに身体の中に入り脳に直接訴えかける事が出来るからです。
まさに北斗の拳の名セリフ「お前はもう死んでいる」ですね。

 

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しかし、碓井先生は鍼を用いません。
碓井先生がおこなう活法の技は全てとても簡単そうです。
相手が力む前に技はかけ終わり、一瞬でその力みは解きほどかれています。

 

施術デモが始まりました。

最初のデモが「かすみ」という技で、上肢の力を抜いてもらい、術者が操作しながら最後腕を一気に放り投げるワイルドな技です。
これがまさに、私がおこなっていて力が抜けない患者さんが多いと感じた技でした。

 

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腕を放り投げられた経験はありますか?
説明は受けていながらも患者さんも未体験ですので、急に腕を放り投げられる事に初めは力が入り空中で腕が「ウッ」と止まります。
3回目ぐらいに抜けてくる患者さんもいますが少数です。

 

開口一番質問をしてみました。

 

鍼太郎「力が抜けない患者さんに力を抜いてもらうためにはどんな事を気をつければいいでしょうか?碓井先生は力が抜けない患者さんに対してどのようにアプローチしていますか?」

 

達人「それはあなたが力を入れているから、患者さんも力が入ってしまうんだよ。相手の支持点になる意識を持たなくちゃ。」

 

鍼太郎 「・・・はい。」

 

支持点とは字のままの通り「支持する点」です。
様々な原因で身体は不安定な状態になります。

その不安定な場所を支えるために「こり」が身体の中で作られます。

 

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ということは、こりは身体を支えるために頑張っているところですので、悪者扱いは出来ません。
そこに「こり」が居座るのは安心するからです。

 

碓井先生の間合いや作法には一切無駄がなく、 受け手が安心する位置にスッとポジション取りをして、触れられた瞬間安心して力が抜けます。

 

口頭で「力を抜いて」と言われた訳ではないのに、勝手に力が抜ける。この感覚が支持点を得ることだと認識しました。

 

体現が技術を支える

 

鍼を扱う技術者である前に一人の人間として、人の身体に触れる・身体について説く人間として自分はどうなのかを考えました。
明確になった自分の課題は、鍼とツボの力を限りなく100%に近い精度で引き出すためのカラダ作りです。

 

再度脱線しますが、私が大好きな同い年のアーティスト三浦大知。
今の時代、歌手とアーティストのラインが不明瞭ですが彼はまさしくアーティストでありエンターテイナーです。歌と踊りをあれだけプロフェッショナルにおこなえ、振り付けも全て自分でおこなえるのは今のところ日本では彼しかいません。

 

以前出したシングル曲で「(RE)PLAY」という曲があります。
ダンスにも歌と同じように、様々なジャンルが存在しその道のプロフェッショナルがいます。MVでは各ジャンルを代表するスーパースターダンサーが集結し、全編を通じてほぼダンスシーンで構成されているのですが、彼は普段主にやっているダンスジャンルではない、ブレイキン・ポッピン・ロッキンと呼ばれるジャンルに挑戦しています。
その道のプロフェッショナルたちとそれぞれのダンスを同等の完成度で繰り広げる光景は圧巻です。

 

 

ダンスだけではなく、ライブではピアノの弾き語り、ドラム、DJなど新しいことに次々とチャレンジする姿にいつも勝手に刺激を頂いております。

 

これらを可能にしている要因をそぎ落とすと、結局は「カラダ一つ」です。

 

幼少期から体現の研鑽を誠心誠意積み重ねてきた結果が今であり、技術は後からついてくるものです。全ては音楽を少しでもより良いものとして観客に届けたい想いなのでしょう。
経験してきた事は全て体現として表れ、繋がっているんだなといつも気づかされます。
おそらく彼が活法や鍼灸をやるにしてもポジション取りやツボの触れ方などは、集中して数日練習すれば並みの鍼灸師以上に難なくおこなってしまうでしょう。

 

ある方のブログの一部を抜粋いたします。

 

≪技術観と身体観というのは以て非なるもので、それぞれに違った意味の厳しさがあります。

技術を陽とすれば体現は陰。

実際は分けて考えるというよりは、体現は技術を支えるものです。≫

 

もう1つは活法メンバーの先生より抜粋

 

http://komatuda.net/
整活生活

 

≪道具によって得られるのは「技術と同等の成果」であって「技術そのもの」ではないということです。

自分の身体を使った技術はそれ自体を学ぶ必要があります。≫

 

鍼灸師にとってのカラダづくりとは?

 

鍼灸師の世界は個性的な方が多そうなイメージがあるのは周知の事実(?)かもしれませんが、実際もそうです。

 

特に私が参加している鍼灸のセミナーはどこもマーケティング無しの、技術のみを研磨し続ける内容ですので皆さんそれぞれ特徴的な感性を磨きながら鍼に活かしています。

 

鍼灸の何が面白いかというと、仕事以外の趣味や日常起こる様々な目にするもの、食べ物、感じるもの全てが鍼灸技術向上に繋がる事です。
遊んでいても、仕事の向上に繋がるこの仕事は本当に幸せだなと感じます。

 

アパホテルの個性的な風貌で知られる元谷社長も、「仕事が遊びで、遊びが仕事。境界なんていらないのです。」とおっしゃっていましたがまさにその通り。

 

以前勉強会の懇親会で話していると趣味や自分の日課が、鍼の技術向上に役立つという話になり、様々な研磨法が挙がりましたので一例を挙げてみます。

  • ・写真を撮る(対象物を見つける・ピントを合わせる・写真のシャッターを押す瞬間はまさに、ツボに鍼を入れるタイミングと同じで非常に重要です。鍼灸師はカメラ好きが多い印象です)
  • ・習字をする
  • ・絵を描く
  • ・料理をする
  • ・自然に触れる
  • ・武道全般(居合い・合気道・古武術・太極拳・空手・柔道など)
  • ・ギターを弾く
  • ・ジャズを聴く
  • ・編み物をする
  • ・旅行に行く

 

などなど。

 

ちなみに私が趣味・研磨法としているものはこの中には・・旅行です。話にあがった内容をリストに挙げると、一つも無かったのでお情けで旅行を付け足しました。いかに自分が平凡な鍼灸師かという事が思い知らされます。

 

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今現在は優れた鍼灸道具とツボの効果を最大限活かせる施術法によって、来院頂いた患者さんの症例はどんどん増えています。

 

しかし、まだまだ長い臨床家としての人生。

 

先の見えない未知なる鍼灸の世界を研磨していくためには、ここで一度道具ではなく自分の身体感覚を磨いていく事とします。もちろん同時に、引き続き技術研磨にも励んでいきますが。

 

私が学びたいと考えたのは、鍼の神様が勧めてくださった居合いにも整動鍼の基礎となる活法にも、人間として生きていくために不変的な存在である「呼吸」です。

 

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患者さんにとってメリットがあるかと言われれば、もちろんあります。

この章の初めに書いたように、研磨の全ては鍼灸技術の底上げに繋がります。

 

「ストレッチをしてください」「肩こりにはこの呼吸法をしてください」「歩くときはこんな事を気をつけて歩いてください」など患者さんに頭を使って意識してもらう事はやめにします。自分が逆の立場だと出来た覚えがほぼないからです。

3ヶ月に1度、歯の定期健診に行くのですが、いつも歯科衛生士さんに歯のフロスをアドバイスされますが継続出来た試しがありません。

 

そうではなく、患者さん本人の身体で直接キャッチして認識、自分で自然と修正してもらえるような内容の施術をこの1年で目指します。

ど真ん中を求めていくために、技術の根底にある体現の世界を研鑽していきたいです。

 

治療中、口数が少なくなったなと思ったら施術側の身体観の底上げが進んでいる証拠です。

その時は是非、温かく見守りながら身体をお預けください。