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下痢症の要因と施術方針③
前回までの内容はこちら
②「とりこめない」下痢
❶胃腸が弱っている状態:脾気虚・腎陽虚・脾気下陥(ひきげかん)
身体の中に十分な栄養分を取り込めないので体内は弱り乾いた状態に傾きます。
胃腸で作られた飲食物の栄養素は、吸収過程の中間産物から最終産物(身体の源となる栄養素)に仕上げる場所まで運ばれる必要があります。
その運搬の発動を担う胃腸に支障があると、胃重感・胃もたれ感など下降性を伴う停滞感を生じ、吸収の入り口で蓄積が一定レベルを超えると、それ以上吸収する事が出来なくなり下痢になります。
❷中焦(身体を上中下3つに分けた真ん中)に渋滞が生じ、吸収過程に過剰に渋滞:中焦気滞
胃腸が正常であっても、運搬後の気の動きが伸びやかでないと
・腹満
・げっぷが多い
・空腹感はあっても食べ始めるとすぐに満腹感になるといった充満感を伴う停滞の症状が出現。
中焦の渋滞によって押し戻されるように下痢となります。
❸胃腸から吸収した栄養産物を受け渡す連携作業がうまくいかない状態:肝脾不和
神経性の下痢のように、胃腸に問題が無くても下痢を起こします。
中焦気滞のように、胃重感や張り感は伴わない事も多い。
❹気の勢いが強すぎて胃腸の動きの調和が乱れる状態:木乗土脾
気の勢いが強すぎることで胃腸の持ち上げたり降ろしたりする作用(上下昇降)の調和が乱れ、胃腸の気が旺盛になって腸管の動きが盛んになる病態です。
この場合胃腸が吸収するだけの十分な時間が与えられない内に、飲食物が強制的に排泄されるこになります。
頻回に便意を催し下痢をしますが、食欲は比較的保たれているような勢いのある男性に多い。
《当院の施術方針》
胃腸が栄養分をしっかり吸収できる環境を調え、吸収された栄養分の受け渡しがスムーズにいくよう、胃気を挙げる方向に施術致します。
《生活指導》
胃腸が弱る・精神が安定しない状態の
一番の特効薬は
「熟睡すること」
睡眠30分前にはブルーライトを見るのは控え、12時までに就寝できる環境を作る心構えを持って頂くだけで、身体は良い方向に変化していきます。
熟睡が出来ない方は是非一度ご相談ください。
今回の6回に渡った「胃腸障害」のテーマはいかがでしたか。
胃腸は第2の心臓。
「便秘症」「下痢症」は決して侮ってはいけません。
慢性になっていたとしても鍼灸治療は改善が可能です。
このテーマで挙げた様々な要因で症状が起こることからも、正露丸やビオフェルミンだけで症状が改善されるのは難しいでしょう。
一人一人の要因を的確に突き止め、その人に合った最善の施術をおこなう事が改善の術になると考えます。
《参考文献》
「漢方中医学講座」著 仙頭 正四朗先生
「いかに弁証論治するか」東洋学術出版社
「「証」の診方・治し方」 東洋学術出版社